序文

玄霧藩国は森国人の国家である。
本来、森国は魔法(所謂ファンタジー)の国であり、他国と比べて機械・科学技術が発展する土壌が少ない。
それなのになぜ、その森国国家である玄霧藩国に科学の結晶とも言える宇宙港が建設されたか。
まずは、そこから語らねばなるまい。


きっかけは一人のACEであった。
そのACEの名はライラプス。いまだ謎の多い彼の存在が、玄霧藩国に大きな転機をもたらした。
彼のもたらす知識は藩国に存在するどのような文献より新鮮で、一部の技術者達にとっては『目から鱗がおちる』等と言う言葉では片付けられない代物ばかりであった。
先の共和国内戦でも敵艦隊の観測・分析に貢献した広域宇宙監視システム“ヘイムダルの眼”も、彼のもたらした知識の一つである。

本来“ヘイムダルの眼”は、共和国の限られた宇宙戦力での最大効率を目指して作り上げられたネットワークである。
そのため、これを本格運用するには共和国に宇宙港が必要になるのは、ごく自然な流れであった。
宇宙港の代用品としての宇宙艦船は建造されつつある。が、それでも。船には港が必要である。

そして、もう一つ。我が玄霧藩国の永遠の同盟国である無名騎士藩国の存在である。
かの国はイグドラシル上に「宇宙開発センター」を持ちつつ、現在まで習得してこなかった。
理由は単純である。開発センターは宇宙開発の地上の拠点であり、宇宙の拠点の存在なしには運用が出来ないからであった。
他にも理由は多々あったが、最大の理由は此処にあった。
宇宙開発センターを生かすためには宇宙港が。宇宙港を生かすためには、宇宙開発センターが。
これらの施設は、二つで一つであった。

ヘイムダルの眼をとった後、双方の国は覚悟を決めた。
『我らが共和国宇宙開発の先駆けたらん』と。

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