『遥か宇宙より 貴方へ』


 宇宙は遠い。長距離輸送システムや打ち上げ機を使用してすら、地球から宇宙へ上がるには、莫大なコストと時間がかかる。
 いずれ、軌道エレベーターや星間リンクゲートの増加によってこれらは解決されるのかもしれないが、少なくとも、現時点ではそうだった。
 そして、宇宙とは過酷で無慈悲な世界である。無駄は許されず、大地を踏みしめる安心感も得られない。
 宇宙を移動するだけでも時間と燃料は大きく失われ、精神的な負担も続く。
 地上に親しい人を残してきた者なら、それは尚の事そうだろう。

 だからかもしれない。誰もが、地球を見たがった。
 宇宙という異世界において、故郷の存在を確認したがる事が多かった。
 地球が見えない位置に着たときは、地球のホロ映像が人気になった。
 自分が守っているもの、守りたいものを、常に忘れたくなかったのかもしれない。
 特に、舞踏子と呼ばれるパイロット達は。




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