「猫士用寮、入居者拡大!」
「三食完備。集団生活を体験して社会を学んでみよう!」
「同時に宮廷・寮付お手伝いさんも募集。住み込みのお仕事になります!」


62118002 国内で配られたチラシより



建設計画始動


昨今、玄霧藩国では治安維持等で猫士を限界まで酷使している。
ここに王猫と一般猫士の区別はなく、待遇は正直言ってよろしくなかった。
「さすがにそれはいかん。人より働くものにはそれなりの待遇をすべきである」
誰が言い出したかはわからないが、この意見は至極当然であった。
そして。
『藩国は家であり、その家に住むものは人種・種別に関係なく皆家族である』
と、恥ずかしげもなく言う藩王が指揮する政庁の面々がこのように決定したのは、ある意味で当然な流れであった。

こうして、玄霧藩国に猫士寮が新たに建設されることとなる。


仕様策定


以下が猫士寮建設時の仕様である。

・入居者は猫士のみ
・お手伝いさんに性別のくくりはなし
・王猫様の都合上、宮廷のそばに建設
・猫士二人で一部屋
・五部屋ごとに専属のお手伝いさんが二人つく
・専属お手伝いさんの他に、寮全体の仕事をするお手伝いさんも居る
・お手伝いさんも二人一部屋(同性同士)
・寮長は一人で一部屋(寮長室)
・お手伝いさんは掃除・洗濯等をする
・お手伝いさんとは別に、全員の食事を作る食堂メンバーも募集
・お手伝いさんは宮廷の仕事もかねる
・お手伝いさんは宮廷の仕事とローテーション。週休1日

このあたりの仕様を元に、建設が開始される。
部屋の数は一先ず食堂や倉庫、直ぐには使わない部屋も含めて40部屋。
拡張の余地を残し、それでも足りない場合は新たに寮を新設する方向となる。
お手伝いさんは所謂帝國で言うところのメードであるが、恐らくなじみが少ない為、お手伝いさんと表記して雇うこととなった。
と同時に、寮の部屋とは別に王猫が宮廷に行くことも有る関係上、掃除や洗濯等をする人員も集めることとなる。

ローテーションの例としては、

曜日月曜火曜水曜木曜金曜土曜日曜
業務内容お休み宮廷宮廷宮廷

のようにシフト性で、休日はなるべく被らないように全体でずらしながら取られることとなる。

専属で二人のお手伝いさんがつく理由も此処にあり、片方が寮の仕事をしている間は片方が宮廷の仕事を。片方が宮廷の仕事をしている間は、もう片方が寮の仕事といった風になるためである。
『朝起きて二人で今日の仕事を確認しあい、昼は各自の仕事をし、夜は仕事の結果と情報のすりあわせをする』
という一連の流れを経験させることで、お手伝いさん同士の連帯感を高める目的もある。

もちろん、猫士たちが二人一部屋なのも連帯感を高める目的がある。
猫士たちはその他、寮暮らしをすることで社会のルールを学んだり、食堂の食事による栄養管理などといった分もしつつ、住居・食費に掛かる費用の出費を押さえることでの精神面の環境改善も狙いである。
また、短くてもよいので猫士・お手伝いさん全員に日記をつけるのを習慣とさせ、寮長に提出することで抱えた悩みや不満などを把握できるように努めている。


造園


宮廷に接すると言う事で、見た目を整えるためと、何より寮に住まうもの達の憩いの場として庭園が造営される事が決まった。
当初はただ配置だけで済ませるという案だったが、いざ作ってみるとこれがイマイチしっくりこない。

「何ていうかこう、盆栽?」
「盆栽と言えば松。……日本庭園?」
「でもウチには松とかないので。洋風盆栽的な!」
「うーん、寄せ植えとかかなあ」

こう言った会話を元に技族の一人が改良案のイメージを作成。

「こんなもんでどうでしょ」
「おおー」
「いいね」
概ね好意的に受け入れられた。までは良かった。
「で、誰がこれ作るの?」
「…………」(沈黙

樹に囲まれて暮らしているだけあって樹医の知識は豊富だが、そういった造園知識はさっぱりの玄霧藩国。
そこに現れたのが一人のお手伝いさんであった。
「私に任せて下さいませんか?」
と言う彼女は、一通りイメージ案に目を通すとおもむろに高枝切鋏を取り出し、
あっさり


やって


くれました。
「……おおー」(一同呆然
「では残りも同様にやってよろしいでしょうか?」
笑顔のままのお手伝いさん。笑顔を頼もしく感じる瞬間である。
「お願い致します」
「受け賜りました」
そうして完成した真・庭園が……これだ。


動物の姿形をしたトピアリーは皆に人気で、これを見にわざわざ来る人もいるらしい。


寮での生活


寮での生活については、現在寮に住みこみで働いているお手伝いさんのある日の日記と、ある猫士のを、本人たちの許可を得た上で掲載することで理解していただけると思われる。
寮生活の一部が見えてくる日記であり、寮長が大変満足していたことが印象深い。


上記のシエラの日記は特に長いもので、他の日記は概ねこれよりも短かい。
だが中にはこれよりも長いツワモノもいたりして、目を通す寮長も大変だったりする。
内容は様々でも、一様に言えるのは、皆がこの生活に満足しているようである、ということである。


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